1月・2月と映画をたくさん見た。
それまでは半年に1本くらいのペースでしか見ていなかったんだけど、
年明けに恵比寿ガーデンシネマが休館するニュースを聞いて、
映画は今見ておかないとヤバイんじゃないか、というムラムラした気持ちが湧いてきて。
これでも高校から大学にかけてはシネフィルだったのです。
1年で200本くらい見てた気がする。でも会社に入ってパタリと見なくなった。
社会人になって10年くらいで見た映画の本数は50本くらいだと思う。えらい極端。
まあ映画を見なくなった代わりに、音楽をもっと聴くようになったり、
ビジネス書を読むようになったり、旅に出るようになったり、
おいしい食事やおいしいお酒を探して出かけるようになったり、
映画のような現実が現れたりしたので、そういうサイクルだったんだと思う。
で、1月に入ってから見た映画の感想。
・ノルウェイの森 @新宿バルト9
村上春樹の小説を「青いパパイヤの香り」のトラン・アン・ユン(ベトナム出身の映画監督)が監督したもの。
えーと、何だかすごく恥ずかしかったです。恥ずかしいな、これ。
ノルウェイの森は好きなんだけど、こんな話だったっけ?そうか、こんな話か、と疑問に思ったり、納得したりの2時間でした。
映像の色合いは確かにキレイなのですが、松山ケンイチの大根ぶりがちょっともう少しどうにかならなかったのか、それとも意図的なものなのか。ねじ式の浅野忠信を思わせる迷演。
ミドリ役の人とハツミさん役の人が良かった。でもあのミドリは可愛すぎる。あんな可愛かったら直子を差し置いてさっさとミドリに行く。
細野晴臣と高橋幸宏と糸井重里が出てくるところがおもしろい。おもしろいけどちょっとふざけてる感じもして一長一短。
・海炭市叙景 @渋谷ユーロスペース
ユーロスペースがえらい治安の悪いところに移転したんだなあ、と思いながら行ってみたら、映画美学校も一緒に移転して、安藤忠雄みたいなビルが建っていた。京橋の映画美学校もなくなっちゃったんだよね。時のうつろいを感じます。
映画の方は、不遇の作家・佐藤泰志の原作を「鬼畜大宴会」の熊切和嘉が監督したもので、函館をモデルにした北海道の港町に住む市井の人々の日常を描くオムニバス。
骨太だった。抱えた丸太でズーンズーンと胸を突かれるような感じ。
いわゆるドラマチックな展開は特にないけれど、頭の上から畳がバタバタと落ちてくるかのように冷たいリアルを積み重ねられていく感じがたまらなくマゾヒスティック。
・ソーシャルネットワーク @新宿ピカデリー
マーク・ザッカーバーグを主人公に、フェイスブックのできるまでを描いたドキュメンタリータッチのドラマ。何人もの登場人物が各々キャラが際立っていて、それを「ファイトクラブ」のデヴィッド・フィンチャーがギンギンエッジを利かせていく感じがたまらない。
トレンドが東海岸から西海岸に移っていく感じや、何がクールで何がデッドかを理屈ではなく感覚で訴えかけてくるところがかっこいい。
とくにナップスター創設者のショーン・パーカーのロックぶりが圧巻。
・人生万歳! @シネマート新宿
ウッディ・アレンの最新作。恵比寿ガーデンシネマのトリだったようだけど、それには間に合わなかったので新宿の小さな映画館で見た。
気難しいおじいさんと世間知らずの若い女の子の奇妙な恋愛模様。
とにかく登場人物がしゃべるしゃべる。海炭市叙景の100倍のセリフ量。
みんな自分が信じているものをしゃべり、けなされてガッカリして振り返って克服する。
一貫したテーマは「自分を信じろ、世間に惑わされるな、知性を最大限に発揮しろ、感覚を大切にしろ」といったところだと思う。
・ウォール街 @DVD
最近続編ができたみたいだけど、87年のオリジナルの方。しがない証券マンのチャーリー・シーンがマイケル・ダグラス演ずる投資家にこきつかわれる。ディティールが隅から隅まで80年代。すごく恥ずかしい。単純。
オリヴァー・ストーンというと、かつては「アメリカの良心」とか言われたものだったけど、ちょっと何だかね。まあ、嘘は言ってないけど、掘り方が浅いんじゃないの、と言ってみたくもなる。
まあ、こういう映画が一世を風靡したあとにポール・トーマス・アンダーソンやクリント・イーストウッドによる主役や善悪が曖昧な作品が出てきたわけだから、これはこれで時代の要請の一過程として残るものなんだと思う。
・マネートレーダー銀行崩壊 @DVD
こっちを見るつもりでウォール街を見たら、何かストーリーがおかしかったのでネットで調べ直して見直した。
95年にイギリスの名門投資銀行ベアリング銀行が一人の銀行員による無茶な先物オプション取引で崩壊していく過程を描く、スリリングなドキュメンタリードラマ。
会社員をやっていると何が怖いってミスが怖いんですが、ミスを嘘で上塗りするとこういうことになりますよ、といういい見本。新人研修で見せるといいんじゃないかな、と思った。
ホント怖い。
ユアン・マクレガーが好演。 アンナ・フリエルも可愛い。
・マイレージ、マイライフ @DVD
首切り会社でアメリカ中を出張する毎日の自由な中年サラリーマンが、新人の女性をOJTする過程で生まれる心の移ろいを静かに描く。基本はジョージ・クルーニーの方が現代的で軽やかで、相対するアナ・ケンドリックの方がどちらかと言うと古臭い固定観念に縛られているような感じなんだけど、不意にその立場が逆転したり、すれ違ったりする感じが何とも上手い。ポイントは?バランスは?自分の生き方を省みる作品。
・ザ・コーポレーション @DVD
「企業」とは何か、「法人」とは何か、「資本主義」とは何かを数々の経営者や研究者のインタビューと歴史的映像を組み合わせながら問うていく作品。一言で言うと、「ひどい」。でも少しはマシになっていく兆候もあるので、まったく希望がないわけでもない。
・キャピタリズム マネーは踊る @DVD
「ザ・コーポレーション」とほぼ同じテーマを、社会派映画監督マイケル・ムーアの視点から掘り下げていくドキュメンタリー。これまた「ひどい」。今の日本企業はアメリカ型の経営に毒されているので、グローバル経済の拡大が唯一の正しい道、と信じこまされている感じだけど、そこには数々の負の部分が含まれている。もはや暴走に近い資本主義の拡大に、ブレーキをかけてみる作品。
アメリカって、ずっと今のアメリカみたいな弱肉強食の成果主義だったかのような錯覚をしてしまうけれど、50年代くらいのアメリカって、80年代くらいの日本並に牧歌的だったんだな、と思う。ひどくなったのはレーガン以降。アメリカが変貌していく過程がよくわかる。
まあ、ちょうど今の日本は旧来型社会が変貌していく過渡期にいると思うので、予習として見ておくには最適。
・ビフォア・サンライズ 恋人までの距離 @DVD
リチャード・リンクレイター監督、イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー主演のラブロマンス。
ヨーロッパの電車の中で偶然出会った二人がウィーンで朝までデートする過程。
いかにも低予算な作りなんだけど、長回しのセリフとナチュラルな演出がすごく良くて、非常にエスプリの効いた作品になっている。ここまですっと入り込める映画ってなかなかない。
・ビフォア・サンセット @DVD
94年の前作から9年後、パリで再会した二人の昼から夕方までの数時間を描く。またまた続く長回しのセリフとナチュラルな演出。9年間の時間の経過をしっかりとドラマに織り込んで、80分の小品ながら非常に奥行きのある仕上がりとなっている。たまりません。
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